食卓に欠かせないにんじん。家庭菜園で栽培できると、いつでも新鮮なにんじんをたくさん収穫できてうれしいですよね。
でも、にんじん栽培は家庭菜園初心者には意外と難しいかもしれません。というわけで、この記事では、にんじん栽培でよくある以下のような疑問についてお答えしていきたいと思います。
・種をまいたけど発芽しない。なんで?
・にんじんが大きならない、育たない。どうして?
・収穫したにんじんの形・色が良くない。理由は?
といった悩みが多いと思いますが、それぞれについて解説していきます。
この記事の信頼性
この記事の筆者は家庭菜園を始めて7年以上です。市民農園での露地栽培とプランター栽培で30種類以上の野菜栽培を行っています。もちろん人参も育てています。
【にんじん栽培】発芽を成功させるためのコツ【失敗しない・難しくない】
人参栽培を難しくさせる最大の理由は、「発芽しない」ことです。
実体験として、
・100粒まいたのに2、3程度しか発芽しなかった
・いつの間にかなくなっている
・発芽しても夏の暑さですぐ枯れてしまう
といったことがあります。同じ経験をされた方も多いと思います。
にんじんの種の発芽率と発芽を成功させるための注意点
にんじんの種は発芽しにくいのでしょうか。
一般的な種の袋に記載の発芽率を比較してみると以下の通りです。
人参 | 70%以上 |
---|---|
大根 | 85%以上 |
小松菜 | 90%以上 |
にんじんの発芽率は、70%程度と、大根85%以上、小松菜90%以上と比較すると低いですよね。なので、発芽に失敗する人が多いということです。
にんじんの種は発芽させるのが難しいことから、「にんじんは発芽すれば半分成功」と言われています。
では、発芽を成功させるには、どのような点に注意すればよいでしょうか。
ポイントは以下の2点です。
・光
・水分(乾燥させない)
順番に説明していきます。
人参の種は発芽に光が必要
発芽成功のためのポイント1点目は、「光」です。
にんじんの種の性質は「好光性種子」です。書いて字のごとく、「光が好きな種」です。
つまり、発芽するために光が必要ということです。
ありがちなのは、種まき時に土をかけすぎてしまうことです。地面深くに埋めてしまうと光が種に届かないため、発芽しにくくなります。
覆土を少な目に、浅く播くを心がけるのが成功のコツです。
ちなみに「太陽のベジガーデン」(NHK/Eテレ)で明治大学の学生が行っていた発芽実験では、覆土は1~2センチが最適との実験が紹介されていました。
実験でのデータ(%は発芽率)は以下の通りです。参考まで。
①覆土なし :90%
②覆土1cm:78%
③覆土2cm:95%
④覆土4cm:55%
⑤覆土6cm:25%
覆土なしの発芽率も高いのですが、発芽後、根が張りにくかったり、屋外では風で飛ばされたり、雨で流されたりといったことがあるので、覆土は必要とのことでした。
水分を保つ(乾燥させない)
発芽成功のためのポイント2点目は、「水分」です。
にんじんの種は小さめなので、保水性が少ないです。
発芽には水分が必要なのですが、種まき適期の夏には、暑さで乾燥してしまい発芽しないというケースがあります。
水分を保つ(乾燥させない)ポイントとして以下3点に注意すると良いです。
・土をしっかり押さえる
・種を一晩水につけておく
・不織布ともみ殻で保湿
順番に説明していきます。
土をしっかり押さえる
1点目は、「土をしっかり押さえる」です。
種をまいて覆土したら、軽く土を手で押さえます(鎮圧します)。土を押さえることで、種の周りに土が密着し乾燥を防ぎます。
種を一晩水につけておく
2点目は、「種を一晩水につけておく」です。
にんじんの種を、種まきの前日の夜に水につけておきます。水につける時間は12時間から24時間程度が目安です。
水につけておくことで、種の殻の部分に水が浸透し乾燥しにくくなるとともに発芽が促されます。
なお、種がコーティングされているペレットタイプは、保水されているので、事前に水につけておく必要はありません。
不織布ともみ殻で保湿
3点目は「不織布ともみ殻」で保湿です。
にんじんの種は、保湿が大事なのですが、覆いをして光を遮ると発芽しません。
光を通す素材でカバーをしたいのですが、その素材として最適なのが、古くから使われているもみ殻と不織布の組み合わせです。
種をまいて覆土したらその上にもみ殻をばらまきます。もみ殻は光を通すので、好光性種子であるにんじんの発芽に悪影響はありません。
もみ殻をまいた畝の上に不織布(100均のもので十分です)をかけてやれば保湿はOKです。
人参が大きくならない、育たない
続いては、人参が大きくならない、育たないという悩みにお答えしていきたいと思います。
人参が大きくならない理由としては以下の点が考えられます。
・株間が狭い
・害虫に食害される
・肥料不足
・日当たりが悪い
・耕土の深さが足りない
・種まきの時期
順番に説明していきます。
株間が狭い
人参が大きくならないという悩みで一番多い原因が「株間が狭い」だと思います。
特に、葉っぱは繁っているけど、根っこ部分が大きくならないという悩みの方は株間が狭いということが多いです。
株間が狭いと栄養分を取り合うだけでなく、ほかの株が邪魔になり大きく育つスペースがなくなります。
家庭菜園をやっているとどうしても沢山収穫したくなったり、せっかく育っているのに抜くのはかわいそう、といった感じで株間が狭くなりがちです。
人参の最適な株間は10センチから15センチと言われています。大きく育てたい方は15センチとると間違いないです。
種まきから、3回程度の間引きで15センチ間隔とすればOKです。
害虫に食害される
2点目は、「害虫に食害される」です。
人参はセリ科の植物なのでパセリなどと同様にキアゲハの幼虫の好物です。葉っぱがあまり育たないなと思ったら、食べられた跡が無いか、茎や葉を良く調べてみてください。
放置するとあっという間に茎だけの葉っぱになってしまいます。
肥料不足
3点目は「肥料不足」です。
人参は多量の肥料を必要としない野菜ですが、肥料が少なすぎても生長が悪くなります。生長がいまいちだなと思ったら、軽く追肥をしてみましょう。
ハイポネックスなどの液肥を使うと即効性があり、肥料不足が原因かすぐわかると思います。
また、野菜の根を育てる効果がある肥料として、熔リンを入れる(元肥の場合、50g/㎡程度)と生長が良くなります。
ちなみに熔リンは天然の原料から作られた肥料で、有機農産物適合(有機JAS)肥料なので安心です。
日当たりが悪い
4点目は、「日当たりが悪い」です。
にんじんは日当たりの良い場所を好む野菜ですので、雑草やほかの夏野菜によって日当たりが悪くなっていると生長が悪くなります。
周りに雑草などが生えている場合は刈り込んでしまいましょう。
耕土の深さが足りない
5点目は、「耕土の深さが足りない」です。
収穫しないと分かり難いのですが、にんじんが伸びていく地面が、深いところまで良く耕されていないと、それ以上伸びることができなかったり、細くなったり、又根になったりします。種まき前に深く良く耕すことが重要です。
種まきの時期
6点目は、「種まきの時期」です。
種まきの適期を逃して種まきをしてしまうと、発芽しにくいのはもちろんのこと、その後の生長にも適した気温でなくなるため、大きく育たないということがあります。
適期に種まきをしたかもう一度確認してみましょう。
人参の形や色が良くない
最後の悩み、「人参の形や色が良くない」について、説明していきます。
形が良くない
人参が曲がってしまったり、分かれてしまったりという形が良くない理由は、主に耕土によるものです。
土を深く耕していないと、にんじんが曲がってしまいます。
また、土の中に石などの障害物があると根っこが分かれてしまう「又根」になります。種まき前に良く耕すことが大事です。
細いものしか育たない場合は、株間が狭いケースや、肥料や水分が不足している場合があるので確認してみましょう。
色が良くない
にんじんの色が良くない原因は主に以下の2点です。
・生育温度によるもの
・とう立ちによるもの
以下、順番に説明していきます。
生育温度によるもの
人参の生育の適温は、15~22度程度です。12度以下に気温が下がってくると、生育不良が発生し、根の色が薄くなったりします。
とう立ちによるもの
人参は、気温が高くなり、日が長くなるととう立ちします。とう立ちするとにんじん部分(根っこ)の栄養が花芽にとられるため、色が薄くなり、食味も悪くなります。
なお、熔リンを入れる(元肥の場合、50g/㎡程度)と色付きや生長が良くなります。
まとめ
いかがでしょうか。
この記事では、にんじん栽培が難しいとお考えの方に向けて、
・種をまいたけど発芽しない。なんで?
・にんじんが大きならない、育たない。どうして?
・収穫したにんじんの形・色が良くない。理由は?
といった悩みにお答えしてきました。
野菜の栽培で失敗はつきものですし、どの野菜も簡単であり、難しいものです。
にんじんはまずは「発芽」が大事ですので、上手に発芽できるようにチャレンジしてみてください。
この記事が何かの役に立てば幸いです。